遺伝性腎がんとは

がん研究の進歩により、腎がんを発症しやすい新しい遺伝性疾患がわかってきました。BHD症候群以外の疾患でこれまでも知られていたフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病と、近年知られるようになった遺伝性平滑筋腫症腎細胞がん(HLRCC)について、ご紹介します。 

フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病

フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は、ドイツの眼科医フォン・ヒッペル(von Hippel)と、スウェーデンの病理医リンドウ(Lindau)らの研究を契機に解明が進んだ遺伝性疾患です。研究者の名前が疾患名につながった点や、アルファベット3文字に略される点は、BHD症候群と似ていますね。余談ですがVHL病もBHD症候群も原因遺伝子の発見にBHDネットチームメンバー(矢尾、馬場、蓮見)が大いに貢献しています。

VHL病は本邦において臨床診断基準が確立しており、症状や家族歴を満たせば、遺伝子検査は必須ではありません。詳しくは診療ガイドラインをご参照ください。

またVHL病では患者様・ご家族支援を目的とした患者会「ほっとChain」が活動しておられます。

遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌(HLRCC)

遺伝性平滑筋腫症腎細胞癌は、Hereditary Leiomyomatosis and Renal Cell Cancerの頭文字をとってHLRCCと呼ばれます。近年本邦でも認識され始めた遺伝性腎がんです。皮膚腫瘍、腎がん、子宮筋腫を三主徴とすることから症状がBHD症候群と少し類似しており、海外においてもBHD症候群研究チームが中心となって診療と研究に取り組んでいます。

確定診断には生殖細胞系列の遺伝子検査が必要ですが、2020年からかずさDNA研究所への検査委託が可能になりました。BHDネットはHLRCCの診療や遺伝子検査被検適応などの相談に対応しております。また北海道大学病院で遺伝相談外来を設けております。ご不明な点がございましたら、どうぞBHDネットメンバーにお問い合わせください。

HLRCCの概要

1973年にReedらが常染色体優性遺伝性に皮膚平滑筋腫や子宮平滑筋腫 (または子宮平滑筋肉腫)を発症する2家系を報告したことにちなみ Reed症候群と呼ばれることがあります。2002年頃に原因遺伝子が明らかになりました。原因遺伝子はフマル酸ヒドラターゼ(FH)といい、細胞のエネルギー産生に関わるクエン酸回路の酵素です。常染色体優性遺伝性に皮膚平滑筋腫、腎癌、女性は子宮筋腫も発症します。腎癌罹患率は海外では20%前後と言われていますが、本邦の疫学情報は未だです。HLRCCの腎癌は一般的ながん年齢より若い年齢層にも起こります。皮膚と子宮の筋腫は殆ど良性で、HLRCCとは関係ない女性にも子宮筋腫は高頻度に起こるため、腎癌発症前の子宮筋腫段階で気づかれる可能性は低いです。

特徴的な3症状

皮膚:毛包周囲の立毛筋を構成する平滑筋が増生し、小さな結節として触れます。チクチクすることもあります。単発もありますが、小結節集簇や多発病変が多いです。皮膚生検では真皮内に平滑筋細胞の増殖が認められ、免疫染色でaSMA陽性、FH陰性が多いです。

子宮:子宮筋腫は一般集団女性にも多い疾患のため、HLRCCを疑うきっかけになることはあまりありません。肉眼や病理像から鑑別することも困難です。しかし比較的若い頃(2030歳代)から月経痛や過多月経などの症状が出やすく、多発傾向があります。免疫染色でaSMA陽性、FH陰性が多いです。

腎臓:充実性あるいは嚢胞形成性に発育し、浸潤能が高いと言われます。フォン・ヒッペル・リンドウ病やBHD症候群のような腫瘍多発傾向は明らかではありません。しかし両腎発生もあります。病理学的には乳頭状構築が典型的とされますが、管状嚢胞状、充実性など多彩な構築をとることも分かってきました。免疫染色でFH陰性になることが多いです。

お知らせ

患者様とご家族の皆様:北海道大学病院で遺伝相談が開始されました。詳しくはこちらから

かずさDNA研究所にて2019年11月から非保険検査が開始されました。詳しくはこちらから。

医療関係者の方へ:遺伝学的検査などのお問い合わせはこちらから。