第105回日本病理学会春季総会でコンパニオンミーティングを開催しました

2016年5月12日

2016年、仙台国際センターにおける日本病理学会春季総会で、BHDネットはコンパニオンミーティングを開催しました。今年2回目となるコンパニオンミーティングの主催では、腎臓に腫瘍を来しうる全身疾患について、現場医師の知見をもとに有意義な討論が行われました。座長は昨年同様、中谷行雄先生(千葉大学)、長嶋洋治先生(東京女子医科大学)。新しい腎腫瘍のWHO分類を黒田直人先生(高知赤十字病院)、フォン・ヒッペル・リンドウ病については澤住知枝先生(横浜市大総合医療センター)、BHD症候群を白瀬智之先生(大津赤十字病院)、SDH-B欠損腎がん・副腎褐色細胞腫を長瀬真実子先生(島根大学)、結節性硬化症を畑中佳奈子先生(北海道大学)らが担当しました。多数の皆様のご協力に感謝します。

第6回BHDシンポジウムの報告

2015年9月26日 横浜市立大学医学部分子病理 古屋充子

 2015年9月23-26日の4日間,米国シラキュースにてUpstate大学泌尿器科主催の元、第6回BHDシンポジウムが開催されました。BHDシンポジウムはBHD症候群に関する最新の知見が集まる国際集会で,およそ2年に1度米国とヨーロッパで交互に開かれています。2015年は前半が医師・研究者らによる学術講演、後半が遺伝カウンセラーと患者さん主体のプログラムで、幅広い討論がありました(今回、会場の写真撮影は禁止でした)。

今年も腎癌研究中心の発表が多く、基調講演は米国立がん研究所泌尿器腫瘍学のDr. W.Marston Linehanが腎癌の概説を、Fox Chaseがんセンター外科のDr. Robert G Uzzoがリスク概念に基づく治療法を論じました。口演27題が朝から夕方まで詰まった濃厚なスケジュールで、基礎分野ではFLCNを中心とする分子経路が、臨床分野では来年改訂予定のWHO腎癌分類やロボット手術の紹介などがありました。米国の某施設ではBHD症候群の遺伝学的検査料として$1500を設定しているそうで(18万円相当)、日本でも遺伝学的検査料は一般に高額であるため、今後検査を希望される患者さんの負担を軽減できる仕組みづくりも望まれます。

日本からは熊本大学の馬場理也先生からXp転座腎癌モデル作成に成功した報告があり、稀少腎癌研究に今後大きく貢献すると期待され注目を集めました。BHDネット集計による日本人115家系の疫学情報も発表致しました。米国立がん研究所集計による226家系データベースには及ばないものの、人種による変異箇所や症状の違いが浮き彫りになりました。殆どの白人患者さんは毛包線維腫を伴い皮膚生検が決めての一つですが、日本では皮膚症状から発見できる可能性は極めて低いので、肺症状から拾い上げることが重要です。生命予後を左右する腎癌研究が主流ですが、自然気胸の1割程度にBHDが含まれていることは多くの医師に共有していただきたい知見です。日本から発信されている肺病態研究がいくつか引用されていましたが、胸膜癒着術や剥離術を推奨する発表もありました。胸膜カバー術の有用性は日産玉川病院の栗原正利先生が前回シンポジウムで講演し、日本の複数施設から論文発表されていますが、国際的には未だ浸透していないようです。

日常生活の注意として、オランダ研究グループによる発表で「飛行機搭乗による気胸発症率が1%」「高速エレベーター利用による気胸発症」がありました。また、過去のオリンピック選手でBHDの方がいるそうです。気圧変動に晒されるパイロットやダイバーは職業として推奨されていませんが、今後は高速エレベーターにのる際も注意が必要です。スポーツは制限しなくて良さそうですが、腎癌発症の背景には代謝メカニズムが関係しているため、健康的な食生活と体調管理を心がけていただきたいと思います。 患者さん達は基礎分野の難しい研究内容でも真剣に聴講していました。初日は高度な研究発表が続いて患者さんを気の毒に思ったのですが、実は一番情報を持っているのは患者さんたちで「論文持参で受診する。医師に対する啓蒙が足りない。医師の勉強も足りないので教育している」という方もおられました。Bench to bedsideを強く意識させられるひと時でした。

蓮見先生らの研究が朝日新聞およびJSTニュースで配信されました

2015年4月5日

 

米国国立研究所 (NCI)を拠点に研究を続けてきた蓮見壽史・由紀子先生、馬場理也先生らが、BHD症候群の原因分子であるFLCN (フォリクリン)とその複合分子FNIP1, FNIP2の機能に関する最新の研究成果を発表しました。2015年4月2日付の朝日新聞デジタル、科学技術振興機構 (JST) の最新情報を提供する総合WEBサイトSciencePortalニュースなどで配信されるとともに、横浜市立大学先端医科学研究推進センターのサイトでも紹介しています。ぜひご覧ください。

Hasumi H et al. Proc Natl Acad Sci USA, in press.

BHDネットの活動が米国BHD財団のニュースレターで紹介されました

2015年3月31日

皆様にご協力・ご提供いただいた資料をもとにしたBHD症候群の診療と研究実績は学術誌などを通じて発信しておりますが、この度、米国BHD財団からBHDネットの活動についてインタビューを受けました。March 2015のNewsletterに掲載中です。BHD foundation > Features and events > Written Interviews からもご覧頂けます。アジアにおけるBHD診療の向上のために、今後もご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します

馬場先生の凱旋講演

講師 馬場理也先生(熊本大学大学院先導機構 国際先端医学研究拠点)

長年にわたり米国国立がん研究所(NCI)でBHD症候群研究の第一線で活躍されてきた馬場理也先生が今春帰国され、横浜市立大学医学部分子細胞生物学(大野研究室)主催の細胞シグナリング研究会で「新規がん抑制遺伝子FLCNの機能解析」と題して講演されました。

VHL (フォン・ヒッペル・リンドウ病)遺伝子の機能解明をスタートに、既知の分子とは相同性を持たない未知の分子FLCNとの出会い、細胞におけるFLCN機能解析、モデル動物の作成、結合分子FNIP1, FNIP2の同定など、最前線の研究内容が紹介されました。今後は日本を拠点に、FLCNシグナルを軸に新たな疾患治療をめざす計画で、腎癌だけでなく様々な代謝性疾患・循環器疾患への応用が期待されます。BHDネットとしても、患者様と医療関係者の皆様に最新の研究成果に基づく治療戦略をご提供するうえで、馬場先生の凱旋帰国は心強いものとなりました。

Baba M et al. Blood. 2012;120:1254-61.

厚生労働省難治性疾患克服事業による疫学調査【御礼】

2014年5月18日

3月から4月まで日本病理学会後援のもとに行われましたH25年度厚生労働省難治性疾患克服事業「BHD症候群の病態解明と包括的診療体制の確立」全国医療機関へのアンケート調査では、多数の医療機関の先生方からご協力をいただくことができました。どうもありがとうございました。集計後、改めて個別にお問い合わせさせていただくことがございますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。また、集計結果に関しましては、学術誌などを通じて後日ご報告させていただきます。

蓮見先生による特別講演(2回目)

2013年10月7日

講師 蓮見壽史先生 (National Cancer Institute, Center for Cancer Research)

米国国立がん研究所でご活躍中の蓮見先生が今年も一時帰国され、非公開の講演会を行いました。2013年10月5日に横浜で開催された癌学会のシンポジウムで最新の研究成果をご発表されましたが、長旅の疲れを感じさせない勢いそのままに、学内講演会では更に多くの知見を紹介していただきました。FLCN-AMPK-mTORのシグナルにおいてPPARGC1alphaがカギとなること、循環器におけるFLCNの役割、また蓮見先生らが発見したFNIP2 (FNIP-L)というFLCN結合タンパク質の新しい役割についてなど、これまで知られていなかったFLCNコンプレックスの働きが次々と明らかになってきました。一連の研究が、腎癌のみならず様々な代謝性疾患・循環器病の治療につながるという期待に満ちた講演会となりました。

第5回BHDシンポジウムの報告

2013年6月28-29日 横浜市立大学医学部分子病理 古屋充子

2013628, 29日の2日間,フランス・パリにて第5BHDシンポジウムが開催されました。今回のシンポジウム内容について簡単にご紹介いたします。

BHDシンポジウムはBHD症候群に関する最新の知見が集まる国際集会で,20089月にデンマークにて第1回が開催されて以降,およそ1年毎にアメリカとヨーロッパで交互に開かれています。2013年は2日間で招待公演3, 口演27題,ポスター13題と濃厚なスケジュールでした。 この他に医師・遺伝カウンセラーを交えた患者さんとご家族向けのプログラムも同日進行しました。
今年最大の特徴は, 第2HLRCC (hereditary leiomyomatosis and renal cell cancer [遺伝性筋腫腎癌]) シンポジウムとの合同開催だったことでしょう。患者さん自身が立ち上げた財団や複数のスポンサー企業に支えられ, またVHL(フォン・ヒッペル・リンドウ病) 患者団体からの後援もあり, 遺伝性腎癌全体に対する研究と診療を向上させようとする意気込みが強く感じられました。

今年は遺伝性腎癌の研究と診療に関する発表が多くありました。日本ではまだ罹患率が把握できていないHLRCCの病態解明・診断基準・治療方針などが真剣に話し合われました。10-20代という若さで腎癌を発症することも稀ではないため、遺伝子検査の時期や家族ケアが大変重要になります。腎癌全体における遺伝性腎癌の割合は低いと言われていますが, 原因遺伝子が同定された2002年以降にBHD腎癌の確定診断が増加しているように、HLRCCもこれから増えてくると思われます。

臨床部門では米国・欧州でもBHD症候群と診断された家系数は増加しており, 変異パターンも200を超えたとの集積結果が出されました。当チームも本邦において40家系近い疾患情報を得ていますが, 今回の欧米データと比較すると, 腎腫瘍の罹患率はほぼ同じで20%程度であることがわかりました。多発性肺嚢胞がCT施行者の100%近くに認められたとするフランスのグループからの発表は当チームの集積とほぼ同じ結果で, BHD症候群を診断する際に最も重要な手がかりになると思われます。これまで気胸治療に関する研究発表は殆どありませんでしたが, 今回, 日産玉川病院の栗原正利先生から「反復性気胸に対するROCメッシュを用いた胸腔鏡手術」が紹介され, 100%気胸の再発を抑えることに成功したという発表は大きなインパクトを与えました。

基礎研究における発表では, NCI (米国国立がん研究所)で活躍中の馬場理也先生がBリンパ球分化におけるFNIP1の重要性を, 蓮見壽史先生・蓮見由紀子先生がエネルギー糖代謝におけるFLCNの役割と疾患との関連を相次いで発表しました。その他にも治療標的になりうるシグナル経路の解明など, 最先端の研究成果が報告されました。

また「BHD症候群」という疾患名についても今更ながら話題になりました。1977年に論文発表したBirt, Hogg, Dubéの名前が呼称に使われていますが, その2年前(1975)に本疾患を報告したHornstein と Knickenberg の名前をつけるのが筋だとする主張がみられ、ようやく世間に浸透し始めた「BHD症候群」の呼称は, 将来変更される可能性を残しています。

今後もますますBHD症候群や遺伝性腎腫瘍に関する新しい知見が発表されるという印象を強くうけた2日間でした。我々も, 最新の知見に根差したBHD症候群の診療と研究に貢献できるよう精進したいと思います。

蓮見先生による特別講演

2012年10月4日 横浜市大附属病院

講師 蓮見壽史先生 (National Cancer Institute, Center for Cancer Research)

米国国立がん研究所でご活躍中の蓮見先生が一時帰国され、非公開の講演会を行いました。BHD症候群の原因遺伝子であるFLCNがエネルギー代謝に重要な役割を果たすことを、モデルマウスや細胞系を用いて解明されました。FLCNが欠失した腎癌細胞株や、FLCNを筋特異的にノックアウトしたマウスにおいてはミトコンドリアが増加します。それに伴いクエン酸やマレイン酸などが増加し、ATPが亢進することが明らかにされました。今回のお話から、FLCNがミトコンドリアの恒常性維持に重要な役割を果たすことや、その機能はPPARGC1alphaを介することなど、最新の知見を垣間見ることができました (最新の論文はこちら)。BHD患者さんの腎癌においてもPPARGC1alphaが治療標的になるのかなど、今後の臨床研究もおおいに期待されます。

 

第3回BHD勉強会

2012年6月29日 横浜市大附属市民総合医療センター

活発な討論でした
活発な討論でした

座長 竹林茂生先生 (横浜市大附属市民医療センター放射線部)

講師 中谷行雄先生 (千葉大学大学院医学研究院診断病理学)

講師 古屋充子先生 (横浜市立大学医学研究科分子病理学)

幹事 西井鉄平先生 (横浜市大附属市民医療センター呼吸器センター)

横浜市大・横浜市大附属市民医療センターおよび近隣の基幹病院から病理診断科、呼吸器科、放射線科、泌尿器科、遺伝子診療部など各科の医療スタッフに多数ご参加いただき、BHD症候群の疾患概念、病態、診断病理学を中谷行雄先生が講演しました。その後、日本における患者数と罹患状況、BHD診療の問題点や各科・地域医療連携の現状などについて古屋充子先生が報告しました。

病理診断のポイント、腎腫瘍の診療方針、患者さんへ遺伝子検査をお勧めする場合の条件など、各科の先生方より専門的立場から、多くのご意見をいただきました。

 

第4回BHDシンポジウムに参加して

千葉大学大学院医学研究院 医師 古賀 俊輔 (所属:神経内科学,神経生物学)

研究成果を発表
研究成果を発表

2012328日から30日の3日間,アメリカ・シンシナティにて開催された第4BHDシンポジウムに参加しました。本シンポジウムについて簡単にご紹介いたします。

 その名のとおりBHD症候群に関する最新の知見が集まる国際シンポジウムで,20089月にデンマークにて第1回が開催されて以降,およそ1年毎にアメリカとヨーロッパで交互に開かれています。第2回までは1日の開催でしたが,第3回は2日にわたり開催され,今回は3日間で口演25演題,ポスター8演題と年々規模が大きくなりつつあります。

 初日は参加登録および"Welcome Social Gathering"と称する懇親会が行われ,翌日からいよいよシンポジウムが始まります。朝食・昼食とも会場に用意されており,夜はダウンタウンに場を移しての懇親会と,本当に一日中BHD研究者と過ごす非常に密度の濃いスケジュールでした。3日目の夕方に全ての日程が終わった後も,有志のディナーパーティーがアナウンスされるなど,全日程を通してアットホームな雰囲気で運営が行われました。

 本シンポジウムの特徴は,研究者や臨床医のみならず患者さんやそのご家族の方も世界中からいらっしゃる点です。口演やパネルディスカッションを同じホールで聴講するだけでなく,積極的に質問したり,時には「内容が難しすぎる。もっとわかりやすく発表してくれなければ困る」という意見が出たりするなど,通常の学会とは一風変わった質疑応答も見受けました。さらに,2日目の午後には患者さん・ご家族向けセッションが別室で開催され,遺伝カウンセラーを交えた意見交換や臨床医を招いての質疑応答コーナーが設けられたようです。

 次に,口演の内容について簡単に振り返ります。2日目(発表初日)の午前は主に臨床に関する話題であり,患者さんのニーズにも十分に応える内容という印象でした。アメリカ国立がん研究所のDr. Linehanの招待講演「BHD症候群における腎腫瘍の治療と管理」に始まり,BHD症候群73家系における長期サーベイランス,肺嚢胞の病理学的特徴,そしてパネルディスカッションにおける症例検討など,臨床医にとって非常にわかりやすく充実した内容でした。また,BHD症候群の原因遺伝子がコードする蛋白質はFLCNですが,そのFLCNに結合する蛋白質として知られるFNIP1の遺伝子異常でもBHD症候群に類似した皮膚疾患を呈するという,大変興味深い発表もありました。午後のセッションでは一転して基礎研究の話題が中心となり,特にBHD症候群は線毛関連疾患であるというオランダの研究グループからの2演題はとても印象的でした。

 3日目も基礎研究の話題が中心で,細胞間接着,酸化ストレス,低栄養とTFE3FLCNマイクロRNAなど,発表内容を追いかけるだけでも精一杯となるほど多種多様な方向から研究が進められていることを改めて実感しました。モデル動物としてゼブラフィッシュを用いた研究もありましたが,血液脳関門の破綻による脳浮腫が観察されたことに大変な驚きを感じました。BHD症候群の患者さんには現在まで神経系の疾患は報告されていませんが,FLCN蛋白質自体は脳の細胞内でも重要な役割を担っている可能性が示唆されました。今後の更なる研究が待たれます。

 臨床症例から基礎研究まで様々な内容が取り上げられるため,全てを正確に理解することは容易ではありませんが,幅広い知識を身に付け,今後の研究や患者さん治療を深く考えるきっかけとなる非常に有意義なシンポジウムでした。私は2日目の午前に, 匿名で集積された本邦のBHD症候群情報を基にした肺嚢胞の病理学的特徴について発表しましたが,その後の休憩時間や懇親会で多数の方から質問やコメントをいただき大変励みになりました。今後もBHD症候群の分野で新しい知見を報告し, 診断と治療に貢献できるよう精進したいと思います。

お知らせ

昨年につづき2018年も当チームのメンバーがベストドクターイン・ジャパンに選ばれました。詳しくはこちらから。

BHD交流会(2018年夏)の開催案内をアップしました。詳しくはこちらから。

横浜市立大学附属病院BHD外来(月曜午後)の受診方法はこちらから。

横浜市立大学附属病院BHD外来へ受診される患者様へ:病院近くの宿泊施設でサービス料金が適用されます。詳しくはこちらから。

医療関係者の方へ:遺伝子検査などのお問い合わせはこちらから。